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2022.09.02

ピュシス銅版画展

先日「ピュシス銅版画展ー写すものと映されるもの」に足を運んでみました。
急激な社会変容、新たなウイルスの出現、激甚化する自然災害。
日本国内のみならず、私たちを取り巻く環境が大きく変化する中で、様々な想いを胸に日々を過ごしています。
心を澄ませ作品と向き合う事で、ソコに「写し映された」メッセージを汲み取る。
多様な情熱と生命力、そして人も自然も一体であると語りかけてくる、そんな作品の数々が展示されていました。

ピュシス銅版画展

ピュシス銅版画展

ピュシス銅版画展

ピュシス銅版画展

ピュシス銅版画展ー写すものと映されるもの
2022年6月18日(土)~9月4日(日)
CCGA現代グラフィックアートセンター

【展示内容・解説】
このたびCCGA現代グラフィックアートセンターでは、東北芸術工科大学出身の銅版画家たちによる展覧会を開催します。
30年前に山形県山形市で開学した東北芸術工科大学は、東北地方を代表する美術教育の拠点であり、同学で20年前に設立された版画コースは多くの版画家を輩出しています。彼らの創作の成果は、各地の画廊を毎年巡回するグループ展「ピュシス 萌芽する版画家たち」により示されてきました。いっぽう、福島県須賀川市で約25年前に開館したCCGAは、収蔵品のアメリカ現代版画に加えて近年では日本の現代版画家の仕事を紹介する展覧会を開催してきました。そして須賀川は、日本における銅版画の草分けのひとりである江戸時代の洋画家・亜欧堂田善の出身地であり、銅版画と縁のある土地といえます。
東北に甚大な被害をもたらした東日本大震災から10年が経過した現在、深刻な自然災害はなおも全国で頻発し、また世界規模で見れば人種・民族・国家間の対立、貧困問題や環境問題はいまだ解決を見ていません。さらには歴史に残る厄災となったウィルス禍により、世界は大きな混沌の時代を迎えています。
銅版画は、金属の表面に刃物による刻目や薬液による化学反応を使って凹凸を作るという、きわめて触覚的な方法で製版がなされます。ところが、そうした版から転写され紙に刷り上がった画面には、作者の想像力を仮構的なイメージに託したような独特の絵画空間が構築されます。そして、寓意や風刺を描くための表現手法としてしばしば用いられてきたことからも分かるとおり、かつての銅版画は時代性や社会情勢がそうしたイメージを通じて反映されるメディアでもありました。現代において銅版画に描写されるイメージは総じてより私的で内的な表現へと変化していますが、それでもなお、その求心的な画面には現実の世界とかかわりあう作り手の心情の機微が濃淡さまざまにあらわれるものであり、その点において時代の空気が作家というフィルターを通して投影されているともいえるでしょう。
「ピュシス」はギリシャ語で「自然」や「生成」を意味します。本展は、自然が生命を育むように若い作家たちが豊かに作品を作り出していくことを願って題された「ピュシス」展を基に、銅版画家に焦点を当てて開催するものです。銅版画は、絵画の源泉を鏡像に求める古典的イメージ論によらずとも、版から紙へと反転像が写される版画の本性や、磨きあげられた銅板といったものが「鏡」への連想をせしめる表現技法ですが、そこに時代性の反映の比喩としての鏡を加えることも可能でしょう。この展覧会が、困難に直面しながらも彼らが版画制作や芸術そのものに改めてどのように向かい合っているのかを示しつつ、「いま」を鋭く映し出す機会になることを願っています。
(公式HPより引用)

(記:T.K)

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